【青森旅行】恐山の宿坊に泊まる(2日目) |
朝は6時30分から、地蔵殿と本堂でのお勤めに参加しなければならない。朝5時に目を覚ましたら、窓の外が明るくなり始めている。夜明けだ。
せっかくなので、夜明けの恐山境内を散歩することにした。宿坊の参籠者は10人ほどいたが、境内を歩く人は誰もいなかった。広大な霊場を独り占めする、なんてぜいたくな朝だ。
本尊を祀る地蔵殿から、岩山を歩き始めると、ちょうど太陽が東の空に昇り始めた。朝日に照らされた慈覚大師堂に参拝。朝風を受けた風車がクルクルと音を立てて回っている。
そして賽の河原へ。鬼もまだ寝ているのか、静かな地獄の朝だ。
宇曽利湖は穏やかな波をたたえていた。
1時間ほどゆっくりと恐山のあちこちを散歩して、6時すぎに長い長い廊下を渡って地蔵殿へ。お勤めの場には一番乗りだった。
朝のお勤めは、地蔵殿と本堂の二箇所で行われる。まず、地蔵殿では曹洞宗の厳めしいお経と太鼓の音を聞きつつ、家内安全を祈願。お勤めの後、奥にある慈覚大師円仁の像を拝ませていただいた。
その後、本堂へ。地蔵殿は幾分新しく改修された「聖なるお堂」のイメージだが、本堂はどこか田舎寺の「寄り合いのお堂」のような雰囲気。お堂の壁のあちこちに、亡くなられた人々の写真が飾られている。実家の仏壇の上に掲げられた祖父・祖母のモノクロ写真に囲まれているようなものだ。
右手に白無垢の花嫁人形がたくさん飾られた場所があった。これは、若くして亡くなった女の子を慰めるべく奉納したもの。いくつかの花嫁人形には、若い男子の写真が添えられている。本堂でのお勤めの後、廊下の掃除をしている男性にその意味を尋ねると、それらは亡くなる以前に付き合っていた男の子の写真だそうだ。あの世で一緒になれるようにという願いだろうか。写真を飾られた男子は、その後、他の女性とお付き合いすることはできないのでは?なんて思った。
写真中央の奥が地蔵殿、左の赤い屋根の公民館風の建物が本堂。
その後、7時から食堂で朝食。昨夜の夕食と同じく、参籠者全員で「五観の偈(ごかんのげ)」を唱えてから食事をいただく。シンプルな朝食だが、朱塗りの器に盛られるだけで目に映える。器って大切だと思った。
さて、この日は下北駅10時11分発のJR大湊線快速「しもきた」号で野辺地に出た後、いったん青森に向かおうと考えた。もう少し下北半島も見てみたい気がしたが、津軽方面にも出かけてみたい。レンタカーの返却時間も考えて、9時前に恐山を後にした。
途中、宇曽利湖を一望できる展望台に立ち寄り、最後に山道にたたずむお地蔵様一体に旅のお礼をして山を下りた。
ところで恐山、昼間、特に午後は多くの老人を乗せたバスがやってくる観光名所でもある。総門を入ると、禅寺独特の凛とした雰囲気だが、総門外にはお土産物屋、食堂、そしてアイスクリーム屋が1軒ずつ並んでいる。
アイスクリーム屋はお婆さんが一人で営んでおり、「霊場アイス」「恐山盛り!」という看板に心が和んだ。ヨモギアイス(200円)を食べてみた。さっぱりとした味わいで、昭和のアイスクリームを思い出した。(続く)
恐山菩提寺(曹洞宗円通寺)
青森県むつ市田名部字字宇曽利山3-2
TEL:0175-22-3825(恐山寺務所)
開山期間/毎年5月1日~10月末日
開門時間/6:00~18:00(大祭典・秋参り期間は別説)
入山料/大人500円 小・中学生200円
宿坊宿泊料/12,000円
ことりっぷ十和田・奥入瀬 弘前・青森・恐山
(ことりっぷ国内版)
発行/昭文社
必要最低限の情報がコンパクトに掲載されており、重宝したガイドブック。歩く旅行に持ち歩きやすい判型だった。