2013年 10月 26日
吉本ばなな『ハードボイルド/ハードラック』の感想 |

最近、数か月前だと思っていたことが昨年の出来事だったり、数年前の出来事が実は7、8年も前だったり、月日の感覚もあやふやになっていること多い。
吉本ばななの小説を読んだのは半年ぶり? それとも一年ぶり? 一つ前に読んだのが『アルゼンチンババア
さて、吉本ばななはもともと大好きな小説家だが、よし、『ハードボイルド/ハードラック』を読もう!と思ったきっかけは、奈良美智の女の子の表紙が目に入ったから。この夏、青森県立美術館で、「あおもり犬」等、奈良美智の作品をじっくり見た影響が大きい気がする。
【青森旅行】あおもり犬がいる青森県立美術館
たった6日間の青森の旅だったけど、そこから太宰治を読み返したり、禅の本を買ったり、奈良美智の絵の表紙の文庫本に手が伸びたり‥‥私の心の模様に、とても大きな影響を与えたことに気づく。
そう、『アルゼンチンババア』も奈良美智の絵、中島英樹のカバーデザインだった。巻末を見ると、いずれも雑誌『ロッキング・オン』に連載されたものだ。
さて。
この本は『ハードボイルド』『ハードラック』、二つの作品が収められている。『ハードボイルド』は、田舎町のホテルに宿泊した女性主人公が幽霊とすごした一夜を描いた物語。『ハードラック』は、脳死の姉をおくる女性主人公の静かな葛藤を描いた物語。
いずれも、吉本ばななの作品ならではの“寂しがり屋でちょっぴり薄幸の文化系女子ワールド”が広がる。雨の夜中にベッドで読むと、何げにはかない気分になって、なかなか眠れなくなる。
『ハードボイルド』は、夏の旅で初日に宿泊した野辺地のホテルを重ね合わせてしまった。深夜、駅について人影少ない闇の町をホテルに向かったこと、一人で入った共同浴場のこと、翌朝、ホテルを出てまぶしい朝日の下で見た町の風景が新鮮だったこと。あのホテルのフロントのお兄さんも、この小説の“ホテルのおばさん”と同じく、不思議な存在感があった。
『ハードラック』は、姉の脳死を受け入れていく妹とその家族の悲しく、それでいて晴れやかな哀歌だった。MDウォークマンに姉が入れていた荒井由実の「旅立つ秋」を、主人公と姉の婚約者の兄がイヤフォンを一つずつ分けあって聴く風景に、1990年代に書かれた小説ならではの叙情性を感じた。
あと、もう一つ。
村上春樹の小説は佐々木マキの描いた絵の表紙が一番似合うように、吉本ばななの小説は、奈良美智が描く少女の絵が一番ぴったりくると思った。
ハードボイルド/ハードラック (幻冬舎文庫)著者/吉本ばなな
発行/幻冬舎
死んだ女ともだちを思い起こす奇妙な夜。そして入院中の姉の存在が、ひとりひとりの心情を色鮮やかに変えていく「ハードラック」。闇の中を過ごす人々の心が輝き始める時を描く二つの癒しの物語。(Amazonより)
by asunaro21
| 2013-10-26 01:29
| 書評・感想文

